プラスチック製品の製造、販売 天馬株式会社のベトナム子会社である
(Tenma Vietnam)がベトナム公務員に現金を渡した問題で、ベトナム財務省は
税関職員11名の停職処分を科していた状況である。
局長、総務局部長を含めたこの停職処分はすでに解除されたと一部報道で出ている。
この事件では2017年と2019年、2回にわたって、計17億9000万円の追徴課税を軽減する為
計2500万円相当の現金を税関職員に提供したとされ、この費用は「調整金」として社内で処理されていたという事である。
ベトナム政府としてはあくまで、証拠が無いので、ベトナム政府でこのような事件があったとは
確定されていないと回答しており、日本政府からの証拠提出を待つ姿勢のようである。
中国、韓国からの企業移転にて今後も日系企業の進出が期待されており、ベトナム政府としても
このような事件を公に認める事は、進出を躊躇させる事にも繋がり、難しい対応とされているようである。
現地日系企業からの聞き取りによると、この事件が起きた後、税関、消防、環境のベトナム政府の監査の際、
「日系企業は本社に報告するので、完全に法令に従った調査、罰則を厳格に適応していく」
という指示が上層部から出ているので、法令違反の見逃しは出来ないという状況になっている。
元々ベトナムの法令については、環境法、税関法、消防法、建築法、いろいろな法令がからみあっており
すべての法令を完全に順守するというのが非常に難しく、多額の費用がかかる為、
今後の日系企業の進出の際には、コンサルタントに丸投げするのではなく、
すべての法令を精査した上で、慎重に判断を行っていく必要がある。
この事件により藤野社長は取締役を退任する意向を示しているが、
厳密に言えば、日本、ベトナム両国にて刑事罰の対象となっている事を確認していきたい。
日本側 不正競争防止法
不正競争のうち、一定の行為を行った者に対して、以下の処罰を規定
罰則 国外での行為に対する処罰(第21条第8項)外国公務員贈賄罪
個人:5年以下の懲役、500万円以下の罰金
法人:3億円以下の罰金
また、悪質と判断された場合、他の法令でも取引停止を受ける可能性も残されている。
ベトナム側 汚職防止法No.36/2018/QH14 汚職防止法No.36/2018/QH14
364条、365条
自己の利益、または特定の職務の履行もしくは不履行に影響を与える目的で賄賂を提供した者
罰則: 20,000,000VND以上の罰金、非拘束矯正、懲役
今回の事件の詳細については、天馬本社の第3者調査委員会のレポートにて詳細を下記のように読み解く事が出来る。
天馬ベトナムが2019年度の1500万円賄賂を支払う顛末
ベトナム税関の税務調査の結果、天馬ベトナムが保有する投資ライセンスに照らして、
ライセンス取得の翌年に追加した投資資本分については、税優遇を受ける事ができず、
また、金型の修理サービスは投資ライセンスの対象外である為、初期投資資本分を超える投資拡張分及び
金型修理事業から生じた所得に対して追徴課税であるとの見解が示された。
本税務調査には天馬ベトナムは大手会計事務所T社とコンサルティング契約を結んでおり
すでにコンサルより追徴課税はおおむね妥当な金額であり、法令に照らして間違いないと回答を得ていた。
追徴課税の内訳としては、
①法人税未納額 7000万円
②法令違反の罰金 1400万円
③納税遅延利息 500万円
この罰則に対し、見逃してもらう対価として、2019年8月30日に天馬名義の銀行口座より現金1500万円を引き出し、
現金を紙袋に詰めた上で、31日に指定された市内の喫茶店にて現金を手渡したとされている。
その後、罰金は260万円相当に減額されている。
この一連の流れについては、天馬ベトナム、天馬本社ともに役員に報告後の対応であった。
この現金の経理処理の検討に当たり、一旦仮払金とされた後、消耗品費の購入として処理する方針であったという。
この方法は2017年度の賄賂事件があった際に同様の処理を行っている。
2019年10月に須藤取締役より消耗品費での処理を中止し、コンサルティング費用名目での領収書を発行してくれる
コンサルティング会社を探すように指示がでており、これをスタッフが税務局に相談したとの事である。
これに対して税務職員からのコンサルタント紹介があり、2019年11月11日に契約を行い
750万円相当をこのコンサル会社に振り込み、コンサル会社は手数料195万円を別領収書で受け取った後、
750万円を現金で返金している。その他の分も調整しており下記の現金の流れとなったようである。
天馬ベトナム →事務局職員 天馬ベトナム → コンサル会社 → 天馬ベトナム
(1500万) (2000万円) (2000万領収書+1500万円現金バック)
日本にて立件されたという事は充分な証拠が残っていたという事であるが、
天馬社内ではこの現金の写真を報告として提出したり、賄賂承認の社内許可の流れが
メール等で残っていたとの事である。
嘘をつくと、後からもっと嘘をつく必要が出てくると言われたりもするが、
泥沼にはまってしまう前に、修正を行っておくべき大きな例となってしまった。